近年、スマートフォンやパソコンの普及により、「デジタル遺産」が重要な相続問題の一つとなっています。デジタル遺産とは、インターネット上のアカウントやデータ、仮想通貨などの資産のことを指します。しかし、一般的な財産と違い、デジタル遺産は目に見えず、相続手続きも複雑なため、適切な管理が求められます。
本記事では、デジタル遺産の種類、相続時の問題点、そしてトラブルを避けるための対策について解説します。
1. デジタル遺産とは?
デジタル遺産には、以下のようなものが含まれます。
・金融関連:ネットバンキングの口座、仮想通貨、証券取引アカウント
・サブスクリプションサービス:Amazon、Netflix、Spotifyなどの有料サービス
・SNSアカウント:Facebook、Twitter、Instagram、LINE など
・クラウドストレージ:Google Drive、Dropbox、iCloud など
・オンラインビジネス関連:ブログ、YouTubeチャンネル、アフィリエイト収益など
これらのデータが整理されないまま亡くなると、家族がアクセスできず、重要な資産を失うリスクがあります。
2. デジタル遺産の相続で発生する問題
デジタル遺産の相続には、以下のような問題が発生する可能性があります。
・アクセスできない
ほとんどのデジタル資産はIDやパスワードが必要です。しかし、亡くなった方のパスワードが分からない場合、遺族がアクセスできず、資産を引き継ぐことが困難になります。
・利用規約による制限
SNSやクラウドサービスの利用規約によっては、第三者への譲渡が禁止されていることがあります。たとえば、Facebookでは故人のアカウントを「追悼アカウント」にすることはできますが、ログイン情報を遺族に提供することはできません。
・仮想通貨の相続問題
仮想通貨は秘密鍵(シードフレーズ)がなければアクセスできないため、秘密鍵が分からないと仮想通貨を失うことになります。銀行口座とは異なり、問い合わせても復旧できないことが多いのが問題点です。
3. デジタル遺産の相続トラブルを防ぐ方法
デジタル遺産をスムーズに相続するためには、生前の準備が重要です。
⑴デジタル遺産リストを作成する
どのようなデジタル資産があるかリスト化する
アカウント情報(ID・パスワード)を記録する
仮想通貨の秘密鍵やウォレット情報も整理しておく
⑵信頼できる人に情報を伝える
家族や弁護士にデジタル遺産の存在を伝えておく
ただし、セキュリティのためにパスワードは定期的に更新する
⑶デジタル遺産に関する遺言を作成する
遺言書の中でデジタル資産の管理方法を指定する
「どの資産を誰に相続させるか」を明確に記載する
⑷オンラインサービスの「遺産管理機能」を利用する
Google アカウント →「アカウント無効化管理ツール」を設定し、一定期間ログインがない場合に家族に通知が届くようにする
Apple アカウント →「デジタル遺産管理者」を設定することで、死亡後に指定の人がデータを引き継げる
4. デジタル遺産の相続に関する法的サポート
デジタル遺産の相続はまだ法整備が進んでおらず、法律の専門家のアドバイスが不可欠です。弁護士に相談することで、相続トラブルを未然に防ぎ、適切な方法でデジタル資産を管理できます。
当事務所では、デジタル遺産の相続についての相談を受け付けております。相続対策をしっかり行いたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。