「すしざんまい」を展開する株式会社喜代村が、マレーシアで「Sushi Zanmai」という名称の寿司店を運営する企業のグループ会社であるダイショージャパンに対し、商標権侵害を主張して訴訟を提起しました。
この訴訟は、インターネット上での商標使用と国際的な商標権の効力範囲に関する重要な論点を含んでいます。
訴訟の背景
ダイショージャパンは、マレーシアで「Sushi Zanmai」という名称の寿司店を展開する企業のグループ会社であり、日本向けのウェブサイトでこれらの店舗を紹介していました。喜代村は、自社の商標「すしざんまい」との混同を招くとして、ウェブサイト上での「Sushi Zanmai」の表示の差し止めと損害賠償を求めて提訴しました。
一審判決
東京地方裁判所は、漢字やアルファベットの表記上の違いはあるものの、呼称や「すしに熱中する」という観念が同一であり、表示が類似していると判断しました。その結果、ウェブサイトからの削除と600万円の損害賠償を命じました。
控訴審判決
しかし、2024年10月30日の知的財産高等裁判所(知財高裁)の控訴審判決では、一審判決が覆され、喜代村の逆転敗訴となりました。知財高裁は、ダイショージャパンのウェブサイトが日本国内の消費者に「Sushi Zanmai」を広告する目的ではなく、閲覧者が「すしざんまい」の広告と誤認する可能性は低いと指摘しました。
判決の意義
この判決は、商標権の属地主義(商標権は登録された国でのみ効力を持つ)と、インターネット上での情報発信が国際的な影響を持つ現代において、商標権の適用範囲をどのように解釈するかという課題を浮き彫りにしています。特に、外国の飲食店の日本向け広告が日本の商標権を侵害するかどうかについて、裁判所は慎重な判断を示しました。
今後の展望
この判決は、国際的なビジネス展開を行う企業にとって、商標権の管理や保護戦略を再考する契機となるでしょう。特に、インターネットを通じた情報発信が国境を越える現代において、各国での商標登録やブランド保護の重要性が増しています。
今回の事例は、国際的な商標権の保護とインターネット上でのブランド管理の複雑さを示すものとして、今後の法的議論や企業戦略に影響を与える可能性があります。